青少年のスポーツ障害

スポーツ傷害とは

スポーツによる障害は大きく分けて、急性の1回の大きな力によって生じるスポーツ外傷と、慢性の繰り返しの小外力によって生じるスポーツ障害とがあります。

スポーツ外傷とスポーツ障害を総称してスポーツ傷害と呼びます。

スポーツ外傷には創傷(すり傷)、挫創(刺し傷)、挫傷(打撲、筋・腱損傷、靭帯損傷、神経損傷)、骨折などがあり、外傷発生時には損傷組織の二次的な拡大を防止し、炎症反応を最小限に食い止めることが必要です。そのための処置としてRICE処置があります。

RICE処置(Rest:安静、Icing:氷冷、Compression:圧迫、Elevation:拳上)は医師の診察を受けるための前処置であり、運動をする為の治療ではありません。外傷後、現場に復帰できるか否かの判断には、コールドスプレーを使用することもありますがコールドスプレーを治療としては使用していません。(サッカー日本代表の場合)

RICE処置が必要な状態のとき、以下の3点は絶対にしてはいけません。

  1. 湿布薬の使用

  2. 飲酒

  3. 入浴 です。

これらは血管を拡張し、血液量を増大させる為に炎症を助長・増悪させる結果となるからです。

冷湿布を外傷後に使用している選手が多いのですが、冷湿布にはL-メントールという成分が配合されていることが多く、L-メントールには筋肉・皮膚の湿度を上昇させる作用があるので腫れがひどくなる可能性があり、使用を控えたほうがいいでしょう。冷たいと感じている間はいいかもしれませんが、氷に勝るものはないでしょう。

RICE処置の一番の目的は腫れの防止と考えています。

スポーツ障害発生にはオーバーユース(使いすぎ)による筋・腱の障害では野球肘アキレス腱炎アキレス腱周囲炎腰痛症などがあります。そして、骨・関節・脊髄の障害では疲労骨折腰椎分離症骨端症(オスグット病など)偏平足などがあります。

スポーツ障害発生の原因として

  1. 筋力、筋持久力の不足、不均衡

  2. 柔軟性の欠如、過度の柔軟性

  3. 骨格の配列異常

  4. スポーツ技術や間違ったトレーニング方法

  5. ウォーミングアップ、クーリングダウン不足

  6. 靴、用具、走面の不適

  7. 運動開始時期と経験年数

  8. 年齢、性別

などが考えられます。

特に成長期におけるスポーツ選手で気をつけなければいけないことはスポーツ障害のほうです。



子供の発育・発達とスポーツ指導について

子供の身体は未成熟であり、発育、成長の途上にあるだけに、スポーツ活動による強い身体刺激は体格の向上をもたらすこともありますが、逆に身体的な機能低下を引き起こすこともあります。

子供の頃のスポーツ活動は神経・筋の機能(調整力)の発達を促進させることを目的としたプログラムを考えなければなりません。つまり、大人と同様に生態の生理的限界を無視したような過酷な練習や競技の継続には十分な注意が必要となります。

  • 脳神経系
    急速に成長し8歳くらいの学童期までにほぼ完成に近づき、12、13歳で成人の水準に達します。

  • 生殖系
    成長、発育が遅く、18〜20歳で完成されます。

  • 一般的な器官系(筋骨格系、循環器系、消化器系、内分泌系)
    特に筋肉の発達は男性ホルモンの影響力が大きく、思春期から発達が著明となります。筋肉は、15歳で成人の33%、16歳で44%くらいといわれています。したがって筋肉トレーニングは14〜18歳から開始し、筋持久力は13〜14歳から始めるのがよいとされています。しかし骨の長さの成長を司る骨端線は16〜17歳頃閉鎖するので、強力な筋力トレーニング活動はそれ以降がよいとされています。また全身持久力(心肺機能)を支える循環機能は25歳頃、呼吸機能は18歳頃にピークが見られるといわれています。
指導のポイント
  1. 成長にあわせたトレーニング方法を考えましょう。

  2. 少ない練習量で最大の効果を出すような指導を行いましょう。

  3. 小学生に痛いといわれないトレーニングのプログラムを考えましょう。


部位別スポーツ障害(外来でよく見かける障害)
  • 野球肩
    繰り返す投球動作によって種々の肩関節構成体が損傷されて、痛みを生じる総称です。(上腕二頭筋腱炎、肩峰下滑液包炎、腱板炎など)

  • リトルリーガーズショルダー
    過度の投げ込みにより利き腕の上腕骨の近位骨端線が離開します。
  • 野球肘
    (内側の痛み) 投球動作の加速期初期には、肘関節は強く外側に曲げられ内側側副靭帯や手関節屈筋腱などの内側構成体が引っ張られ炎症が起こります。
    (外側の痛み) 投球動作の加速期初期には、肘関節は強く外側に曲げられ上腕骨小頭部(外側)の循環・栄養が障害されます。(離断性骨軟骨炎)
    (プロ野球選手が軟骨摘出術を受けることになる障害です。親指側の肘関節のところに痛みを認めたら要注意です)
    (後側の痛み) ボールを離したとき肘関節は過仲展され、遊離体を形成したり、上腕三頭筋の付着部に炎症を起こします。
  • 腰椎分離症
    成長期における過度のスポーツ活動(腰椎の捻り、強い背屈・前屈の繰り返しなど)によるストレスが加わって、上下関節突起間部に起こる疲労骨折と考えられています。

  • 腰痛症
    スポーツ活動が行われる間、脊椎骨に付着する筋・筋膜・腱・筋腱移行部・付着部にストレスが集中し筋・腱・靭帯などに損傷や変性が生じておこる痛みです。
    長期間の専門種目だけに限ったスポーツ活動を続けている選手、同一パターンのスポーツ活動の繰り返しにより、筋肉の過労が生じて起こる痛みです。
  • オスグット病
    成長速度のほぼピーク時に脛骨粗面(膝蓋靭帯が脛骨に付着するところ)に発生する痛みです。ジャンプやランニングのやりすぎで、大腿四頭筋がかちかちに凝り固まって、脛骨粗面が引き上げられて起こります。
    静かにしていても脛骨粗面部が痛むときはスポーツは禁止です。予防には大腿四頭筋のストレッチングとその筋肉のおとろえるのを防ぐことが大切です。
下腿
  • 疲労骨折
    疾走型と跳躍型があります。疾走型は脛骨(すねのほね)の膝に近いところに、跳躍型は脛骨の中央部にみられます。レントゲンでは、痛みが起こってから2〜3週間経過しないと変化が現れないので、痛みを認めた直後は診断が難しい障害です。

  • 脛骨疲労性骨膜炎(シンスプリント)
    脛骨の足関節に近いところに痛みがあります。レントゲンには変化が出ません。中学1年生・高校1年生の1学期によく認めます。この時期はレベルもあがり、ダッシュやジャンプ系の練習が多いからでしょう。ヒラメ筋のストレッチ(膝を曲げて、アキレス腱を伸ばすこと。踵を浮かさないように)を十分に行いましょう。
    ウサギとびを行なっているクラブはほとんどないとは思いますが、ウサギとびは百害あって一利なしといわれています。ヒ骨(細い骨)の疲労骨折の原因にもなります。
足部
  • アキレス腱炎
    アキレス腱はふくらはぎの筋肉の収縮を踵に伝える腱で、ランニングやジャンプの繰り返しなどのオーバーユースによって腱自体や周囲組織に炎症が生じます。

  • 外脛骨障害
    聞きなれない障害と思います。舟状骨(足の内側の骨)の後脛骨筋腱内に存在し、スポーツ後に内果の前下方部に痛みを認めます。体重の負荷やサイドステップやインサイドキックやシューズによってこすれて、この部分に炎症が生じて痛みが発生します。偏平足の選手によく見られます。



    最近、外来の患者さんの診察をしていて、足部の障害が非常に多いように思えます。先に述べた外脛骨障害を始めとして偏平足、三角骨障害、足底筋膜炎などさまざまな障害があります。これらの障害はシューズに影響されるものが多く、安易にシューズを選択することは避けなければならないでしょう。
シューズ選びのポイント
  1. 自分の足にあったものを選んでください。
    (指の長さ、幅、左右差、インソールの着用など)

  2. 踵のクッションがしっかりしているものを選んでください。

  3. 目的に合ったもの(例:グラウンド用、ロード用など)

  4. アーチサポートのあるものを選んでください。
    (土踏まずのところのクッションがあるもの)

  5. 買いに行く時間帯を考慮してください。
    (朝と夕方では足のサイズが違うため)

  6. 実際に履いて歩いたり走ったりしてみてください。
  • シューズに自分の足を合わせるのではなく、自分の足にシューズを合わせるように選択することが大切です。



障害はまだまだたくさんありますが、大事なことは、自分では軽傷と思っていても、重傷の場合もありますので、早期にドクターの診断を受けることです。

診断をされ、たとえば、2週間は痛みの強くなる練習はしないようにといわれたならば2週間後にもう一度診察を受けることです。

よく外来で、「1週間休んだから自己診断で練習を行なった」ということを聞きますが、1週間というのはあくまでひとつの目安であって、練習をしていいということではありません。練習はドクターの許可があるまではしないということが再発防止につながると思います。また、見学をするくらいなら、できる範囲(痛みが強くならない程度)の練習は続けていたほうがよいというのが私の持論です。


参考文献

  • スポーツ指導者のためのスポーツ外傷・障害(南江堂)
  • スポーツ外来(メジカルビュー社)
  • スポーツシューズの医学(金原出版)

【記述者】

  永江医院 院長 黒田 良
    取得認定医(日本整形外科学会認定専門医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認
            定健康スポーツ医、日本医師会認定産業医、日本体育協会認定スポーツ医、日本リ
            ハビリテーション学会認定臨床医)